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水道事業紹介

国庫補助事業に係る事業評価の結果及び対応方針について

東京都一般広域化施設整備事業(多摩分水事業)の評価 多摩丘陵幹線

目次

  1. 1 事業の概要
    1. 1−1 事業目的
    2. 1−2 事業概要
  2. 2 採択後から現在までの事業を巡る社会経済情勢等の変化
    1. 2−1 水需要の動向
    2. 2−2 水源の水質の変化等
    3. 2−3 当該事業に係る水道事業者等の要望等
    4. 2−4 関連事業との整合
    5. 2−5 技術開発の動向等
    6. 2−6 多摩地区の現状
    7. 2−7 想定される被害等
    8. 2−8 更新期を迎える管路
    9. 2−9 社会的ニーズ(お客さま意識)
  3. 3 採択後から現在までの事業の進捗状況
    1. 3−1 一次整備区間
    2. 3−2 二次整備区間
  4. 4 事業全体の定性的効果
    1. 4−1 生活面への影響
    2. 4−2 都市活動への影響
    3. 4−3 生命及び財産への影響
    4. 4−4 断水による被害・影響の回避
  5. 5 コスト縮減及び代替案立案等の再評価
    1. 5−1 コスト縮減方策
    2. 5−2 代替案の検討
  6. 6 事業の費用対効果分析
  7. 7 対応方針

1 事業の概要

1−1 事業目的

 多摩丘陵幹線は、多摩地区における水需要の増加に伴って、既存の送水能力が限界に達する地域や、管路が樹枝状に形成され効率的な水運用ができない地域の課題を解決するため、次の目的で整備を行う。

(1)送水能力の強化

 多摩西南部地域への送水能力を強化し、安定的な給水を確保する。

(2)広域的なバックアップ機能の確保

 送水幹線の事故時及び震災時においても、安定した給水を可能とするため、広域的なバックアップ機能を確保する。

(3)更新時などにおける既存送水管の代替機能の確保

 給水に支障なく既存送水管の補修や更新を行えるようにする。

1−2 事業概要

(1)整備内容

ア 送水管(多摩丘陵幹線)の整備

区間 : 一次区間
鑓水小山給水所(八王子市鑓水)から聖ヶ丘給水所(多摩市聖ヶ丘)
二次区間
拝島ポンプ所(昭島市拝島町)から鑓水小山給水所(八王子市鑓水)
支線
高月支線、楢原支線、西寺方支線、狭間支線及び大船支線
受水幹線
東村山系受水 小作系受水(第二八王子線)
口径 : 本線1500mm 支線500〜700mm 受水幹線1100mm
延長 : 一次区間12.0km
二次区間19.6km
支線及び受水幹線合計13.7km

イ ポンプ所の整備
拝島ポンプ所(仮称)、椚田ポンプ所(仮称)、川口ポンプ所及び大船ポンプ所(仮称)

(2)事業費

 約627億円

事業費の内訳
項目 費用(億円)
送水管整備費 523
ポンプ施設等整備費 93
用地費 11
合計 627

(3)事業期間

 平成8年度から平成24年度

<多摩丘陵幹線イメージ図>

多摩丘陵幹線イメージ図

2 採択後から現在までの事業を巡る社会経済情勢等の変化

2−1 水需要の動向

  東京都水道局は、23区及び多摩地区の3市1村(武蔵野市、昭島市、羽村市、檜原村)を除く26市町に給水を行っているほか、都営水道の給水区域に含まれていない多摩地区の一部の市にも上水道の供給を行っている。

(1)人口の動向

 東京都の近年の人口の動向は、平成16年度で約1,248万人、平成17年度で約1,258万人、平成18年度で1,268万人,平成19年度で、1,279万人、平成20年度で1,290万人となっており、緩やかに増加している。
 また、給水人口については、区部及び多摩28市町(未統合3市含む。)を対象として、平成16年度で約1,244万人、平成17年度で約1,254万人、平成18年度で1,264万人,平成19年度で、1,275万人、平成20年度で1,286万人となっており、緩やかに増加している。

(2)水道需要の動向

 都の水道需要は、年々増加してきた。特に、経済の高度成長期には、人口や産業の首都圏への集中、給水普及率の上昇等により大幅な増加を記録した。しかし、昭和48年秋のオイルショック以降、経済の低成長への移行や水道需要抑制策の浸透等によって、増加速度は急激に緩和された。
 一方、近年では、都の使用水量の約7割を占める生活用水は、長期的に増加傾向にある。今後の使用水量は、平均世帯人員の減少等により、一人当たりの使用水量の増加が見込まれること等から、引き続き増加傾向を示すと考えられる。
 なお、人口増加や経済成長に伴って、今後の水道需要は増加するものと考えており、平成15年12月に行った将来の水道需要予測では、平成25年度における一日最大配水量は600万m³程度になると見込んでいる。

2−2 水源の水質の変化等

 現在、多摩地区の水道は、主に東村山浄水場、小作浄水場及び朝霞浄水場からの送配水により行っている。これらの浄水場の水源水質については、ここ数年、取導水施設や浄水処理、配水系統の変更等、本事業に影響を及ぼすような大きな変化はない。
 したがって、本評価では考慮しない。

2−3 当該事業に係る水道事業者等の要望等

要望は特にない。

2−4 関連事業との整合

 東京都水道局は、給水サービス水準の一層の向上や環境保全への貢献など、幅広い視点を取り入れ、四半世紀先を見据えた新たな施設整備長期構想として、平成18年11月に「東京水道長期構想 STEP 〜世界に誇る安心水道〜」を策定した。
 さらに、この構想を実現するために、平成19年度から平成21年度までの3年間に取り組んでいく施策の事業計画と財政計画を明らかにした「東京水道経営プラン2007」を平成18年12月に、平成22年度から平成24年度までの3年間に取り組んでいく施策の事業計画と財政計画を明らかにした「東京水道経営プラン2010」を平成22年1月に策定した。
 以上の構想及びプランにおいて、多摩丘陵幹線の整備を主要な整備事業として位置付け、関連する事業との整合を図り、整備を進めているところである。

2−5 技術開発の動向等

 当該事業においては、これまで、工期短縮の取組として、築造に時間のかかるシールドの立坑を減らすための地中ドッキング工法の採用や、2方向の発進を兼用する立坑の採用などを行ってきている。しかしながら、採択後から現在までの間、当該事業において、特筆すべき新技術の導入はない。

2−6 多摩地区の現状

 多摩地区の水道は、かつては各市町村が個別に経営し、施設の整備を行ってきた経緯があり、配水区域が市町ごとに細分化されている上に、小規模な施設が多い。また、配水区域を見直すための小規模施設の統廃合を行うために必要な送水能力が不足しており、広域的水道としての安定的・効率的な水運用が困難な状況にある。
 さらに、送水の拠点である東村山浄水場及び小作浄水場が北部に位置していることから、これまでの送水幹線は、当該浄水場を起点とし南部地域に向けて樹枝状に整備されてきた。そのため、第一次整備区間の運用が始まり、第二次整備区間の完成に向けて整備を進めている現在でも、送水幹線間で相互融通できない管路が存在し、バックアップ機能が十分ではない状況が続いている。

2−7 想定される被害等

 当局は、これまで経年管の布設替等の漏水防止対策に努めてきた。しかし、依然として漏水等の管路事故は発生している。
 これらのことから、漏水等による送水管の事故が発生した場合には、バックアップ機能が十分でないため、必要な水量を給水所に送水できず、断水が発生する状況が続いている。

2−8 更新期を迎える管路

 送水管の多くが、昭和40年から昭和50年代に整備されており、今後10年間で更新期を迎えることとなる。

2−9 社会的ニーズ(お客さま意識)

 平成20年度に行った第2回水道モニターアンケートにおける設問「今後の安定給水のための施策」の回答(複数)のうち、「事故時や震災時にも強い水道施設の整備」を要望する回答が72.7%と、一番高い結果となっている。

3 採択後から現在までの事業の進捗状況

3−1 一次整備区間

 平成8年度から事業に着手し、平成17年度に完成し、同年8月から運用を開始している。

3−2 二次整備区間

 平成14年度から事業に着手し、当初の完成予定年度は平成22年度であった。しかし、一部工区の発進立坑築造において、現場条件が設計段階の想定と大きく異なっていたことや、地元住民からの要望に対応するため、大幅な工事内容の変更と工期の見直しを行った。工期の見直しにあたっては、遅れを最小限にするため、シールドの地中接続箇所を変更するなど、工程を見直す工夫を行っている。その結果、工期を2年間延伸するにとどめ、平成24年度に完成を予定している。また、このことに伴い、本格的な運用開始は平成25年度を予定している。

4 事業全体の定性的効果

 多摩地区は、給水人口(平成20年10月時点で約413万人)や配水量(一日平均配水量約127万m³)などの規模において、横浜市のような大都市規模と同等又は上回る規模になっている。
 また、都民の日常的な使用に加えて、市街地の拡大経緯や立地条件から、企業の主要工場や百貨店、病院、大学等の教育施設などの水道需要が多く、水道水の安定供給の重要性は極めて高い。
 このため、多摩地区に一たび断水が発生すれば、都民生活や社会活動に甚大な影響が及ぶものと考えられる。さらに、都内はもとより、国内の経済活動に波及する可能性もある。

4−1 生活面への影響

 管路事故等により断水が発生した場合、飲料水や炊事用水をはじめ、入浴、洗濯、洗面のほか、トイレの使用にも支障を来すなど、日常生活への支障や衛生環境の悪化を余儀なくされる。

4−2 都市活動への影響

 管路事故等により断水が発生した場合、都市活動の面では、工場の生産調整や飲食店における営業時間の短縮、営業停止に加え、水冷式空調設備の停止など、社会経済活動に計り知れない影響を及ぼすことが想定される。

4−3 生命及び財産への影響

 以上のような影響に加え、都民の生命や財産の維持に大きく貢献する消防活動や医療活動にも、深刻な影響を及ぼすことが考えられる。
 とりわけ、首都東京の機能を司る行政施設が多く立地しているほか、緊急時、災害時に対応可能な三次救急医療等も多く点在しており、一たび管路事故等により断水が発生した場合、消火用水の確保が困難となるため、延焼による火災被害の拡大が想定され、生命や財産が失われる可能性がある。
 また、手術や人工透析等の水を多く必要とする医療行為への影響が避けられず、最悪の場合には生命に係る事態も想定される。

4−4 断水による被害・影響の回避

 多摩丘陵幹線は、樹枝状に形成されている多摩地区の管路形態において、下流域の既存給水所を環状に結ぶ送水幹線である。 したがって、多摩丘陵幹線の整備により、現状の管路形態においては不可能であった広域的なバックアップ機能が確保されることになる。
 このため、管路事故等が発生した場合においても、断水を発生させない送水運用が可能となり、上記に掲げた被害や影響は回避されることになる。

5 コスト縮減及び代替案立案等の再評価

5−1 コスト縮減方策

(1)シールドトンネル内充てん材の変更

 セグメントと水道管との空げきに注入する充てん材を、従来のコンクリートからエアミルクに変更することにより、材料費の縮減や工期の短縮等によるコストの縮減を図った。

(2)建設発生土の工事間流用

 建設発生土の一部を、本事業の他の工事工区の盛土や埋戻しに流用することにより、発生土処分費の縮減を図った。

5−2 代替案の検討

(1)既存送水管の二重化

 送水能力の強化及び広域的なバックアップ機能の強化等の目的を達成するため、本事業と同等の効果が見込まれる給水区域内において、既存送水管の二重化を想定すると、その管路延長は約100kmとなる。
 この二重化整備を実施した場合、事業費として1,040億円程度となり、本事業の整備費用を大きく上回ることから、代替案とすることは適当ではない。

(2)地下水利用の増強

 送水能力の強化及び広域的なバックアップ機能の強化等の目的を達成するため、本事業の代替案として、地下水利用の増強が考えられる。現在、多摩地区では、未統合3市を含む28市町で、水道用として水質と地盤沈下、両面の動向を考慮しながら日量最大約38万m³(平成20年度)の地下水を揚水している。
 地下水は、身近に利用できる水源として可能な限りの活用を図っていく考えではあるが、地盤沈下、水質の面から、現在時点では、将来にわたる安定的な水源として位置付けることは困難であり、地下水利用を本事業の代替とすることは適当ではない。

〈地盤沈下の動向〉

 平成20年 地盤沈下報告書(東京都土木技術支援・人材育成センター(旧東京都土木技術センター))によれば、多摩地域の地下水の主要用途が上水道水源であるため、地下水位は各年の水需要の影響を受けやすい状況にあるとし、ここ数年の地下水位の変動状況をみると、一部には横ばい、又は低下傾向を示すものがあるなど、揚水規制の効果は頭打ちの状況にあることは明らかであり、地域によっては地盤沈下の進行が予測されるとしている。
 東京都の地盤沈下と地下水の現況検証について(東京都環境局 平成18年)によれば、平成11年度の地下水管理ガイドライン策定調査報告書において試算した地盤沈下を起こさないために維持することが望ましい地下水位について検証を行ったが、設定水位を維持しても、地盤沈下が全く起こらないとは言い切れないことが明らかとなったとしている。

〈地下水の水質の動向〉

 水質についても、トリクロロエチレン、1,4-ジオキサンなどが検出され、一部の井戸の使用を中止してきた経緯がある。

6 事業の費用対効果分析

 本事業は、事業実施から10年以上経過していることから、平成19年7月に改定された水道事業の費用対効果分析マニュアルの改訂趣旨に照らし、残事業の投資効率性を評価するため、費用対効果分析にあたっては、年次算定法を用いることとした。
 本事業の実施効果として、送水能力の強化、管路事故時等の広域的なバックアップ、既存送水管の更新期における代替機能の確保などが見込まれる。
 このうち、費用対効果分析にあたっては、事業の効果が大きいと考えられる管路事故時等の広域的なバックアップに着目した。 費用(C)は、管路整備費、ポンプ施設整備費、用地費及び維持管理費を、効果[便益](B)は、漏水事故よる断水被害額の軽減分を計上した。
 なお、費用(C)及び効果[便益](B)は、水道事業の費用対効果分析マニュアルに基づき事業全体の費用便益比及び残事業に対する費用便益比を算定した。

 事業評価期間は、多摩丘陵幹線完成後の平成25年度から平成74年度までの50年間とする。事業全体の費用便益比は1.98となり、残事業に対する費用便益比は3.36となった。

事業全体に対する費用便益比(B/C)
費用(C)  914億円
効果[便益](B) 1,813億円
費用便益比(B/C) 1.98
残事業に対する費用便益比(B/C)
費用(C) 403億円
効果[便益](B) 1,357億円
費用便益比(B/C) 3.36

※残事業に対する費用便益比は、事業の投資効率性の観点から、事業継続・中止等を判断する指標で、再評価時点以降に発生する費用及び便益から算出する。

7 対応方針

 本事業は、定性的評価及び費用対効果分析の結果から、現計画による整備は適切であると認められるため、継続する。

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