膜ろ過・その他の除去設備
膜ろ過・その他の除去設備
このページでは、膜ろ過の仕組みや特定の物質を除去する様々な装置について紹介します。
1 膜ろ過
膜ろ過の仕組み
泥の付いたジャガイモを水で洗って、ザルにあけると、ザルの目より細かい泥の粒子は通り抜けてしまいますが、ザルの目より大きなジャガイモはザルの中にとどまります。
これと同じように、適度に小さな穴が空いている膜を使えば、水中のミネラルなどの必要な成分は残したまま、濁りなどを取り除くことができます(図1)。
図1 ろ過のイメージ(左)とろ過膜の模式図(右)
膜は、空いている穴の大きさによって、以下の4種類に分けられ、取り除きたいものに合わせて膜の種類を選定します(図2)。
精密ろ過(MF)膜 | 主に水の中の濁りや細菌類などを除去 |
限外ろ過(UF)膜 | 主に水の中の濁りや細菌類などを除去 |
ナノろ過(NF)膜 | 水に溶け込んでいる成分も除去可能 |
逆浸透(RO)膜 | 水に溶け込んでいる成分も除去可能、海水から淡水をつくる装置等に利用 |
膜の穴の大きさが小さくなるほど水の中の不純物が少なくなりますが、膜を通過させるために、水に大きな圧力をかける必要があり、その分多くのエネルギーを消費します。
また、NF膜やRO膜は、膜の穴が極めて小さく、水の中に不純物が多いと膜がすぐに詰まってしまうので、通常は、前段にMF膜やUF膜を配置します。
通常は、細菌類やウイルスが除去できれば問題ないことから、東京都水道局の膜ろ過施設では、MF膜やUF膜を使用しています。
図2 水中の様々な不純物と膜ろ過の適用範囲
膜ろ過の導入例
東京都水道局では、平成11年度から膜ろ過方式を多摩地区の山間部の浄水施設を中心に導入しています。
また、区部においても平成19年3月から、砧浄水場及び砧下浄水所で膜ろ過施設が稼働しています。それぞれ1日に4万立方メートルの水道水をつくることが可能で、国内でも有数の処理能力を持つ膜ろ過施設です(令和3年9月末現在)。
図3 砧浄水場の膜ろ過施設(左)及び模式図(右)
(筒状の容器に精密ろ過(MF)膜が入っています)
2 様々な物質の除去設備
除鉄・除マンガン装置(除去対象:鉄・マンガン)
水源の水の中には地中に含まれている鉄やマンガンが溶け込んでいることがあります。
これらは、着色の原因となるだけでなく、家庭までの配水管の途中で管内に鉄やマンガンの固体として付着し、はがれ落ちた際に異物として家庭の蛇口から出てくることがあります。
そのような被害を防ぐため、鉄やマンガンが溶け込んだ水に塩素を添加してから除鉄除マンガン装置(マンガンで表面をコーティングした砂(マンガン砂)を敷き詰めた装置)に通すことで、鉄やマンガンを除去しています。
図4 除鉄除マンガン装置(左)、マンガン砂となる前の砂(右上)及びマンガン砂(右下)
活性炭吸着塔(除去対象:トリハロメタン等を発生させる原因物質)
水道水は、消毒のため塩素を加えています。しかし、落ち葉などが微生物に分解されて生じた物質(フミン質等)が川などの水に多く含まれる場合、塩素と反応して消毒副生成物(トリハロメタン、トリクロロ酢酸等)が生成します。
このフミン質等は凝集沈殿で除去できますが、膜ろ過施設の場合、ろ過しただけでは完全に除去できません。
そこで、フミン質等の除去が難しい膜ろ過施設において、それらの除去が可能な活性炭吸着塔の導入を進め、消毒副生成物の生成量を低減化しています。
図5 活性炭吸着塔(左)及び活性炭が充填された活性炭吸着塔の内部(右)
ばっ気処理装置(除去対象:揮発性有機化合物(VOC))
原水に揮発性有機化合物(VOC)が検出される場合は、ばっ気装置を用いて除去しています。
ばっ気処理装置の内部には、VOCの除去を効率的に行うため、空気と水をよく混合させるための充填剤を入れています。
図6 ばっ気処理装置(左)及びばっ気処理の仕組み(右)