急速ろ過
急速ろ過
このページでは、急速ろ過の特徴や、凝集沈殿(濁りを集めて沈める)の仕組みについて紹介します。
1 急速ろ過とは
水中の小さな濁りや細菌類などを薬品で凝集、沈殿させた後の上澄みを、速い速度でろ過池の砂層に通し、水をきれいにする方法です。
比較的濁りの多い河川水や湖沼水の処理に適しており、現在最も広く用いられています。東京都では金町浄水場、朝霞浄水場など、大規模な浄水場でこの方法を採用しています。
この処理方法は、狭い敷地でも多量の水を処理できることが特徴です。また、台風によって水がひどく濁る場合でも、凝集沈殿処理における凝集剤の注入量を増やすことで濁りを十分に沈めることができます。
(水の濁りについての説明はこちらをご覧ください。)
図1 急速ろ過池
図2 急速ろ過の仕組み
2 凝集沈殿のしくみ
東京都では、凝集沈殿処理を行う際、ポリ塩化アルミニウム(通称PAC:パック)という凝集剤(水中に分散した濁り成分を凝集させるために使用される薬品)を使用しています。
PACがどのように作用して濁りを集めるかというと・・・
(1)水の中の濁り成分は、通常マイナスの電気を帯びているため、互いに反発しあいながら水中に分散して漂っている。
(2)そこへPACを投入すると、プラスの電気を帯びたPACが濁り成分の表面に付着し、濁り成分のマイナス電荷を打ち消して電気的に中和する。
(3)電気的に中和された濁り成分は、反発する力がなくなり、互いに寄り集まる。
図3 凝集のイメージ
このようにして凝集した濁り成分は、大きく重くなるために、水中に分散していられなくなり、ゆっくりと沈んでいきます。
台風による豪雨で濁度が高い水を処理する場合でも、凝集沈殿処理におけるPAC注入量を増やすことで濁り成分を十分に沈めることができます。
濁り成分が沈んだ後の上澄み水について、次の砂ろ過処理を行います。
図4 凝集剤添加前と後の比較
3 砂ろ過のしくみ
砂ろ過を行う砂層は、1mm未満の砂と数mmから数cmの砂利が数十cm~1m程度の厚さに敷き詰められた構造をしています。この砂層の上から下へ水を通すことにより、凝集沈殿でとりきれなかったこまかい濁りを除去します。
ただし、除去しようとしている濁りの大きさに比べ、砂粒と砂粒の隙間はかなり大きいため、砂粒の隙間で濁りをこしとるのではなく、濁りが砂粒の表面にくっつくことにより除去されます。
連続して砂ろ過を行っていると、濁り成分が砂層に蓄積していきます。そのため、砂ろ過方向とは逆から水を流す逆流洗浄などにより、砂粒から濁り成分を除去して、砂層を洗浄しています。
(濁り成分は、ろ過砂の隙間でこしとられるのでは
なく、ろ過砂の表面に吸着することで除去される)
図7 ろ過及び逆流洗浄のイメージ
4 他の浄水処理との組合せ
かび臭の原因となる物質など、水の中に溶け込んでいる物質は、急速ろ過の凝集沈殿ではほとんど除去ができません。
そこでそのような物質を除去する場合は、急速ろ過に粉末活性炭(注1)や高度浄水処理(オゾン処理+生物活性炭処理)などの処理を組み合わせます。
(高度浄水処理については、こちらをご覧ください。)
注1 粉末活性炭…粒径0.15mm未満の活性炭。粉末活性炭は、かび臭原因物質などの水に溶け込んだ
物質を取り除くために使用しています。