STEP21 策定にあたって

 明治31年(1898年)の淀橋浄水場の通水から、東京の近代水道の歴史は始まり、間もなく100年を迎えます。この間水道局は、増え続ける水道需要に追いつくために、水源の確保と施設整備に努めてまいりました。その結果、近年、ようやく需要に見合う水源と施設規模とを確保することができるようになりました。
 近年の東京の水道需要は、かつてのような急激な伸びはなくなり、量の確保が急務であった時代に一区切りつけることができました。これからは、「量と質」を高いレベルで安定的に供給し続けることが求められる時代といえます。
 需要に見合う能力を身につけたとはいえ、水源の中には、施設が未完成などのため不安定なものがあります。また、現在の水道施設の中には、老朽化により機能が低下しているものや、事故時などのバックアップ機能が不足しているものもあり、まだまだ解決しなければならない課題がたくさんあります。水質面への配慮もいっそう重要になっています。
 水は、どのような時代にあっても、人々の生活や都市の活動にとって、一時も欠かすことができないものです。
 水道局では、東京の近代水道の新たなる世紀を迎え、都民の皆様が安心して生活できるよう、課題の解決に取り組んでいきます。さらに、水道施設全体のレベルアップを図り、次の世代に誇ることのできるような水道システムを築き、それを確実に引き継いでいきたいと考えています。
 そこで、水道局では、次なる世紀を支える水道を構築するため、これまでの歴史を振り返り、また、現状と課題、水道を取り巻く新しい社会潮流を見据え、「東京水道新世紀構想−STEP21−」を策定しました。
 この構想は、昨年11月に「生活都市東京の水道システムを考える会」から受けた、「水道使用者の視点からみた水道システムのあり方」についての報告を反映したものです。この報告は、水道システムを考える基本的視点を「つよい水道」、「やさしい水道」とし、使用者が「安心できる水道」を目指すべきであるというものです。
 構想の「STEP」とは、「Strong(つよい)」と「TEnder(やさしい)」すなわち「Peace of mind(安心)」の頭文字を取ったもので、「STEP21」は、21世紀にふさわしい水道に向けて一歩一歩着実に進むことを意味するものです。
 この構想を広く都民の皆様に明らかにし、都民の皆様と一体となって、東京水道の新世紀に向け新たなSTEPを踏み出し、「安心を未来へつなぐ東京水道」を実現してまいりたいと考えています。

平成9年5月

東京都水道局長
川北和徳

記事ID:081-001-20240819-006330