STEP21 第5章 施設整備の基本構想

5−1 安定した水源の確保

1 基本方針

 渇水に強い都市づくりに向けて、渇水時にも安定的に給水できる水源を確保していく必要がある。このため、以下の方針で施策を進めていく。

=将来にわたり、渇水時にも安定的に給水できる水源の確保に向けて=
  • 利根川水系等において10年に1回の割合で発生する規模の渇水の際にも、平常どおりの給水を確保することを目標とする。
  • このため、水源開発の促進とともに、節水施策を一層推進していく。
  • さらに、水源の安定化、多様化、多系統化を進めるなど、水源の安定性向上を図る。
  • これらの施策を総合的に展開し、都の給水安全度の更なる向上を図っていく。(給水安全度1/10を目標)

2 施策の展開

水源開発を促進する

主な施策
フルプランに基づいて進められている利根川水系及び荒川水系の水源開発を促進していく。

フルプランによる施設(東京都関連分)

  完成施設 建設中施設
ダム建設 矢木沢ダム 下久保ダム
草木ダム  奈良俣ダム
八ツ場ダム 戸倉ダム 浦山ダム 滝沢ダム
流況調整河川   北千葉導水路 霞ヶ浦導水路
農業用水合理化 埼玉合口二期 利根中央事業(利根中央用水、利根中央土地改良)
調節池、
下水処理水の活用等
利根川河口堰 荒川調節池
渡良瀬貯水池 霞ヶ浦開発
 

節水施策を一層推進する

  • 節水型都市づくりに向けて、水の有効利用などの節水施策を引き続き積極的に推進していくとともに、新たに、行政指導や料金体系の見直しなどを視野に入れた施策の展開も検討していく。
主な施策
  • 広報媒体を利用した都民の節水意識の高揚
  • 経年管の計画的な更新や給水管の材質改善などによる漏水防止対策の推進(目標漏水率:5%台)
  • 節水型機器の開発と普及
  • 関係部門と調整を図った上で、循環利用や雨水利用などの水の有効利用の推進
  • 節水努力を反映できる料金体系の検討

既得水源の課題を解消する

  • 既得水源を有効に活用するため、水量、水質、水利権等の面で障害となっている課題の解消に努めていく。
主な施策
  • 緊急暫定水利となっている中川・江戸川導水路水源の将来にわたる活用についての国への働きかけ
  • 相模川水源の安定化への取組み
  • 砧上・砧下浄水場水源の取水の安定化のための集水埋管、立型集水井など取水施設改修についての国への働きかけ
  • 玉川浄水場水源を水道水源として活用するための水質改善の関係部門への働きかけ及び浄水処理方法等の調査・研究

水源の安定性を向上させる

  • 利根川水系及び荒川水系における渇水等の影響を極力低減するため、多様な水源の活用をより一層進めていくなど、水源の安定性の向上に努めていく。
  • 渇水調整のあり方等について検討し、水源の安定性向上のための 施策の効果が確実に担保されるよう、関係機関に要請していく。
主な施策
  • 国費による渇水対策ダムの建設など、各県と協力して利根川水系及び荒川水系の利水安全度のさらなる向上についての国への要請
  • 多摩地区で予備的な水源として保有している地下水等の水源や拝島原水補給水源などの既存水源の活用
  • 関係部門との調整を図った上で、渇水時等の緊急時に使用する新たな地下水源の確保
  • 地下水の水質汚染に対応した曝気処理施設等の整備
  • 利根川と多摩川を結ぶ原水連絡管の二重化
  • 利根川水系及び多摩川水系を含めた広域的な原水連絡施設の調査・検討
  • 多摩川上流の水源林の一層の保全及び小河内貯水池の水質保全対策の充実

異常渇水等への対応を検討する

  • 異常渇水等に備えて、新たな水源確保の方策について、幅広い観点から調査・研究に取り組んでいく。
主な施策
  • 他水系からの緊急導水の方策の調査・研究
  • 海水の淡水化技術の調査・研究
  • 水質的には劣るものの異常渇水時にも比較的豊富に存在する河川最下流部の水等の活用策など新たな水道システムを視野に入れた方策の調査・研究
  • 震災後の漏水量の増加を考慮した水源確保についての調査・研究

5−2 ゆとりある施設能力の確保

1 基本方針

 安定した給水を行うためには、あらゆる状況に対応できるゆとりある施設能力を確保する必要がある。このため、以下の方針で施設整備を進める。

=安定して給水できるゆとりある施設の整備に向けて=
  • 更新・改造時や事故時にも対応できるゆとりある施設能力を確保する。
  • 地形特性や水道需要の動向に合わせたバランスのとれた施設配置を実現する。
  • 施設の更新・改造は、給水に影響を与えないよう施工時期を分散して計画的に実施する。
  • 地震に強く、維持管理のしやすい信頼性の高い施設とする。
  • 施設の整備に当たっては、環境に十分配慮し、環境への負荷が小さい施設とする。

2 施策の展開

ゆとりある施設能力をバランスよく確保する

  • 施設の更新・改造時における長期的な施設能力の低下に備え、安定して給水できるゆとりある施設能力を確保する。
    また、長時間にわたる大規模な事故時等においても、安定給水に大きな影響を与えないように施設能力を増強するとともに、多摩地区の小規模浄水施設を有効に活用していく。
  • 将来の水道需要及び高低差等の地形特性を考慮し、浄水施設をバランスよく配置する。
    特に、多摩地区での水道需要の増加と、小作浄水場のバックアップ機能の不足を考慮した施設配置を実現する。
主な施策
  • ゆとりある施設能力と浄水場ごとの施設能力を定めた基本計画の策定
  • 多摩川上流部への新たな浄水場の建設
  • 多摩地区小規模浄水施設の整備

原水の相互融通機能を強化する

  • 渇水時における水源の安定性向上や、大規模な浄水場の改造時などにおける導水機能の充実を図るため、原水の相互融通機能を強化する。
  • 特に、利根川水系の原水のより一層の有効活用や、既存施設の更新・補修に備え、利根川と多摩川の原水の相互融通機能を強化する。
主な施策
  • 利根川と多摩川を結ぶ原水連絡管の二重化(再掲)
  • 利根川水系及び多摩川水系を含めた広域的な原水連絡施設の調査・検討(再掲)

更新・改造を計画的に実施する

  • 水道需要が急増した昭和30年代後半から40年代にかけて集中して建設した浄水場の更新・改造は、各施設の経年・劣化状況を的確に把握し、安定給水に影響を与えないよう、更新・改造時期を分散し計画的に実施する。
  • 設備等の更新・改造は、信頼性、操作性、経済性等を考慮して、効率的で維持管理が容易な施設となるよう計画的に実施する。
主な施策
  • 金町浄水場等の浄水場改造計画の策定と実施

信頼性の高い施設をつくる

  • 常に安定した給水を確保するために、貯水施設、取水施設、導水施設から浄水施設までの信頼性を向上させる。
  • 貯水施設は、地震による被害が生じた場合、給水等に多大な影響を与えるため、耐震性を強化する。
  • また、導水施設の安全性を確保するため、地盤条件の悪い施設や経年化した施設を優先して二系統化等を行う。
  • 浄水場では、施設全体の耐震性を向上させるとともに、安全性・操作性を向上させる。
主な施策
  • 村山・山口貯水池の耐震性強化
  • 小作浄水場導水施設の二系統化
  • 常用・非常用自家発電設備の整備
  • 場内配管の耐震性強化
  • 液体塩素から取扱いの容易な次亜塩素酸ナトリウムへの転換

循環型社会づくりに向けて環境に配慮した施策を推進する

  • 浄水施設でのエネルギー利用効率の向上を図るとともに、未利用エネルギー、未利用資源の有効活用等について調査・検討を進め、環境負荷の低減に努めていく。
  • 浄水場発生土などの有効利用をさらに進めていく。
主な施策
  • 太陽光発電等の新エネルギーについての調査・検討
  • 浄水場発生土、建設発生土などの有効活用の拡大

5−3 公平で効率的な送配水システムの構築

1 基本方針

 平常時はもとより、事故時や渇水時にも公平で効率的な給水が確保できる信頼性の高い送配水システムを構築する必要がある。このため、以下の方針で施設整備を進める。

=信頼性の高い送配水システムの構築に向けて=
  • 効率的な水運用や非常時のバックアップ機能を強化するため、給水所間等における相互融通機能を充実する。
  • 広大な配水区域の解消と配水池容量の増強を図るため、バランスよく給水所を整備する。
  • 平常時の水圧の均等化、震災時の復旧の効率化などを図るため、配水区域のブロック化を推進する。
  • 管路の耐震化など地震に強い施設整備を推進する。
  • より効率的、安定的な水運用を行うため、水運用システムを充実する。

2 施策の展開

相互融通機能を充実する

 効率的な水運用や非常時におけるバックアップ機能を強化するため、浄水場と給水所及び給水所間を連絡する送水管ネットワークを構築する。その構築にあたっては、渇水時、事故時を想定し、異なる水系間の相互融通や各給水所の二系統受水が可能な送水ルートを確保する。

主な施策
  • 東南幹線の延伸
  • 多摩丘陵幹線の整備
  • 二系統受水に必要な管路整備

給水所の整備を推進する

  • 一つの給水所が受け持つ広大な配水区域や地盤高低差の大きい配水区域を解消し、常に適切な配水コントロールを行うため、バランス良く給水所を整備する。また、多摩地区では、市町域を越え、地形特性を考慮した合理的な配水区域に再編成するため、給水所の新設・改造を行う。
  • きめ細かな配水コントロールを行うため、再編成した配水区域に適した能力のポンプ設備を整備する。
  • 給水所の整備にあたっては、需要の時間変動への対応と事故時や震災時等への対応に必要な容量として、各給水所で計画一日最大配水量の12時間分以上の配水池容量を確保する。
  • 経年・劣化した給水所は、各施設の状況を的確に把握し、給水に影響を及ぼさないよう計画的に更新・改造を実施する。
主な施策
  • 給水所の新設・改造
  • ポンプ設備の改善
  • 配水池容量の増強
  • 老朽施設の計画的な更新・改造

配水区域をブロック化する

  • 平常時の水圧の均等化、事故時・震災時等の対応の迅速化、漏水量の減少や断水等の影響範囲の縮小等を行えるように、配水区域のブロック化を推進する。
主な施策
  • ブロック化パイロット事業の実施
  • ブロック化計画の策定と事業の推進

管路の耐震性を強化する

  • 管路全体の耐震性を強化するため、管路の新設や取替え等においては、耐震管(耐震性の高い材質や継手構造の管)を使用することを基本とする。なお、材質や継手などが耐震性の低い管、水配上の基幹となる路線や河川横断管など、震災対策上重要な路線を優先的に耐震管に取り替えていく。
  • 管路の健全度等の管路診断情報をマッピングシステムで活用し、送配水管路の効率的な維持管理や迅速な事故対応、計画的な更新を支援する。
主な施策
  • 経年管(普通・高級鋳鉄管等)の計画的な更新
  • 重要路線の耐震管ネットワークの構築
  • マッピングシステムを活用した管路の維持管理・更新の総合的な支援システムの構築

震災時における給水の確保を充実する

  • 震災時に、飲料水や生活用水を身近な場所で確保できるように、水道局施設、公園等の避難場所や学校等避難所に、関係部門と連携して、より多くの応急給水の拠点を整備する。
主な施策
  • 応急給水槽の整備の推進
  • 新たな給水拠点整備方法の検討

水運用システムを充実する

  • より効率的、安定的な水運用をめざし、水運用センターで原水から配水までの一元的な運用管理を行う。そのため、水運用計画の策定から運転・監視に至る総合的な水運用管理が可能となるよう、情報・通信技術の進展に合わせた水運用システムを構築する。
  • 震災や大規模事故等の緊急時に、迅速かつ適切に対応できるように水運用における危機管理体制を整備する。
主な施策
  • 給水所等の直接運転指令化
  • 送配水管の主要弁の遠隔制御化
  • 衛星通信回線などを利用した災害時情報連絡体制の強化
  • 水運用センターのバックアップ機能の強化

5−4 安全でおいしい水の供給

1 基本方針

 より一層安全でおいしい水を供給するため、以下の方針で施策を進める。

=安全でおいしい水の供給に向けて=
  • 河川等の水質が、水道水源として良好な水質に改善されるよう、国等関係機関に働きかける。
  • より安全でおいしい水を供給するため、原水水質に対応した高度浄水処理の導入を推進する。
  • 取水から給水栓までの水質管理を強化する。
  • 小規模受水タンクでの水質劣化に対応するため、増圧直結給水方式の普及を促進する。
  • 新たな浄水処理方法等の調査・研究を進める。

2 施策の展開

水源水質の改善を求める

  • 良好な水道水源が確保できるよう、下水道の普及等による水源水質の改善を、今後も各県と協力し、国等関係機関に引き続き強く働きかけていく。
  • また、当局が管理する貯水池のうち、汚濁の進行が心配されるものについては、水質改善について調査・検討を進め、水源水質の保全に努める。
主な施策
  • 水源水質の改善要望
  • 貯水池の水質改善手法の調査・研究

高度浄水処理の導入を推進する

  • より一層安全でおいしい水を供給するため、金町・三郷浄水場への高度浄水処理の導入に引き続き、利根川水系の浄水場については、全量を対象に導入する。
  • また、他の水系の浄水場については、原水水質の動向等を勘案して導入を検討する。
主な施策
  • 利根川水系浄水場(金町、三郷、朝霞、三園、東村山)への高度浄水処理の導入

水質管理を強化する

  • 原水の水質状況に対応した浄水処理を行うため、また、水質事故等の不測の事態の発生も考慮して、河川水質の監視体制や浄水場での水質管理等を強化する。
  • また、給水過程での水質変化を的確に把握するための水質監視体制を整備し、得られた水質情報を浄水処理や水運用へフィードバックするシステムを強化する。
主な施策
  • 自動水質計器等による給水栓水質管理の強化
  • 突発的水質事故等の監視体制の強化
  • 水質情報管理の充実

増圧直結給水方式の普及を促進する

  • 小規模受水タンクでの水質劣化問題を解消し、安全でおいしい水を直接給水するため、増圧直結給水方式の普及を促進する。
主な施策
  • 増圧直結給水方式適用対象の拡大への取組み

浄水処理方法等の調査・研究を進める

  • 高度浄水処理については、かび臭、トリハロメタンや病原性微生物など複雑化する水質問題に対応するため、オゾン処理と活性炭処理だけではなく、これらの処理と生物処理や膜処理等とを組み合わせるなど、様々な処理方法ついて調査・研究を進める。
     また、今後水道水への影響が予想される微量有機化学物質等や、河川水質の将来動向等についても、調査を進めていく。
  • 調査・研究に当たっては、国内外を問わず幅広く情報を収集するとともに、大学等関係研究機関との連携を図っていく。
主な施策
  • 新たな浄水処理方法等の調査・研究

5−5 生活に密着した水道サービス

1 基本方針

 都民の暮らしに一層の安心と豊かさを届けるため、都民と水道との接点である給水設備に関するサービスを充実させる必要がある。このため、以下の方針で、生活に密着した水道サービスを推進する。

=安心で豊かな生活を支える水道サービスの実現に向けて=

  • 社会動向や都民ニーズを踏まえた新しい水道サービスを展開するため、給水設備に関する情報提供や技術開発を推進する。
  • 給水設備の管理を向上させるための方策を検討する。
  • 給水管の漏水防止及び震災対策等を推進する。

2 施策の展開

給水設備に関する情報提供を充実させる

  • 給水設備の管理区分を、使用者等にわかりやすく知らせる。
  • 使用者等が、使用目的に合わせて適切な給水管や給水器具を選択できるよう、給水設備に関する情報提供や相談体制を充実する。
  • 生活の安心と豊かさを支える水に関連する機器等を紹介する。
主な施策
  • 給水設備の管理区分のPRの充実
  • 給水設備に関する情報提供や相談体制の充実
  • 水に関連する機器等の紹介

給水設備の管理を向上させる

  • 給水装置の適切な維持管理を図るため、管理区分等の見直しを検討する。
  • 小規模受水タンク以下の給水設備の衛生管理を向上させる方策について、関係機関とともに検討する。
主な施策
  • 給水装置の維持管理区分の見直しの検討
  • 小規模受水タンク以下の給水設備の衛生管理を向上させる方策の検討

給水管の漏水防止及び震災対等を推進する

  • 配水管分岐箇所からメータまでの給水管の漏水防止及び震災対策を積極的に推進する。
  • 宅地内に残存する鉛管等老朽化した給水管の調査を行い、材質改善を促す。
主な施策
  • 公道下及び私道部の給水管の整理並びに材質改善の一層の推進
  • 75mm以上の給水管の材質改善の推進
  • 宅地内の鉛管等老朽化した給水管の取替え促進の諸施策への取組み

新しい給水サービスのための技術を開発する

  • 今後の高齢化・少子化などの社会動向や都民の多様なニーズに対応した新しい給水サービスを展開するため、給水装置に関する技術開発を推進する。
主な施策
  • 情報の付加価値利用や料金体系の多様化などにも対応できる、新しい検針システムの研究開発
記事ID:081-001-20240819-006342