「東京水道経営プラン2016」に掲げた施策

Ⅰ 基幹ライフラインの運営

Ⅰ-1安定(24時間常時供給)

令和2年度の主な実施内容

(1)水源対策

①水源の確保
計画 首都東京にふさわしい高い利水安全度を備えるため、八ッ場ダム建設事業等を推進
到達目標
10年に1回程度発生する規模の渇水に対応する水源確保率 : 100%(令和2年度)
実績 八ッ場ダム建設事業のダム本体のコンクリート打設工事や試験湛水などを実施し、令和2年3月に完成し、令和2年4月より運用を開始

10年に1回程度発生する規模の渇水に対応する水源確保率 :  100%(令和2年度)
評価 ・八ッ場ダムの完成により、経営プラン2016の目的は達成しました。
・確保した水源は、首都東京の安定給水を継続するため、水道需要への対応はもとより、将来の気候変動による影響も踏まえ、安定化を図るとともに、最大限活用していきます。
②水道水源林の適正管理
計画

人工林の健全な育成のため、第11次水道水源林管理計画に基づき、間伐・枝打等の森林保全作業を着実に実施

民有林対策として、手入れが行き届かず、所有者が手放す意向のある多摩川上流域の荒廃した民有林を購入するとともに、ボランティアによる民有林の再生を実施

多様な主体と連携した森づくりとして、都民、企業、大学、地元自治体等多様な主体との連携を強化し、水源地の重要性の理解促進を図る

実績

602haの森林に対して、森林保全作業を実施

令和2年度は59件・267haの民有林を購入
※うち重点購入地域(土砂流出による小河内貯水池への影響が大きい地域)は58件・252ha
920人のボランティアが多摩川水源森林隊による森林保全活動に参加(令和2年度は新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、約5か月間に渡り活動を中止)

平成29年4月から多摩川水源サポーター制度を開始
(令和2年度末時点の登録者数 : 2,333人)
平成29年4月から「東京水道~企業の森(ネーミングライツ)」の取組を開始し、平成29年度に6社、平成30年度及び令和元年度に各1社、令和2年度に2社の企業と協定を締結(令和元年度に1社の企業と協定を解除)
平成29年4月から企業協賛金の取組を開始し、令和2年度は10社の企業から2,100,000円の協賛金を受入れ
平成30年3月から「東京水道 水源林寄附金」の受付を開始

令和2年度寄附受付実績: 寄附件数11件、寄附総額1,974,714円

評価

・人工林の健全な育成
 森林の成長状況に合わせた森林保全作業を実施することで、人工林を適正に保全・育成しました。

・民有林対策
 荒廃した民有林の購入を継続して実施するとともに、平成29年度より、特に小河内貯水池への土砂流出が懸念されるエリア約2,000haについて、所有者に対し積極的に売却を働きかけ、おおむね10年間での購入を推進していく取組を開始しました。所有者への呼びかけを行い、令和2年度末までに717ha購入済みです。
 また、購入した森林の間伐・枝打等を行うなどして、水道水源林として適正に管理を行い、小河内貯水池への土砂流出の予防を図りました。
 さらに、多摩川水源森林隊のボランティアの方々が間伐・枝打等の作業を実施することで、民有林の再生を図りました。

・多様な主体との連携
 都民をはじめとして、多くの方に水源地への関心を持っていただくため、平成29年度から多摩川水源サポーター制度を開始し、メールマガジンによる水源地の状況に関する配信を実施しています。
 また、水源地保全の取組に貢献したいという方々から協力金を募る「東京水道 水源林寄附金」制度について、区市町村の窓口や営業所等にパンフレットを設置し、周知を行いました。
 さらに、企業と協働して森づくりを行い、水源地保全への理解を促進することを目的とした「東京水道~企業の森(ネーミングライツ)」制度では、協定企業と森林保全作業体験などを実施しました。また、より多くの企業に水道水源林の森づくりに参画していただくための「企業協賛金制度」では、企業からの協賛金を頂き、水道水源林の保全作業に活用しました。
 
 こうした取組によって、引き続き水道水源林としての水源かん養等の機能を最大限に発揮させ、適切に水道水源林を管理していくことで、 将来にわたって都民の水源地が守られます。

(2)水道基幹施設再構築

①浄水場の更新に備えた代替浄水施設等の整備
計画 大規模浄水場更新工事に伴い低下する施設能力相当の代替浄水施設及び関連する導水管・送水管をあらかじめ整備

整備目標年度
境浄水場再構築    : 令和3年度完成
東村山境線      : 令和3年度完成
境浄水場関連送水管  : 令和3年度完成
三郷浄水場増強    : 令和5年度完成
実績 以下を実施
・境浄水場再構築の設計
・三郷浄水場増強に向けた先行施設の整備工事
・東村山境線及び境浄水場関連送水管の整備工事
評価

・対象年度の検証
 コンクリート構築物の供用年数を踏まえ、浄水場の更新期間を約90年とすることで、浄水場更新及び代替浄水施設整備の着手時期等を変更しています。
 境浄水場再構築は2020年代に、三郷浄水場増強は2040年代に着手時期をそれぞれ変更しています。また、境浄水場関連送水管の整備は、境浄水場再構築に併せて実施します。
 境浄水場は、再構築の着手に向け設計を実施しています。

 三郷浄水場は、増強整備に先立つ施設整備工事を実施しています。
 東村山境線は、シールド工事用の立坑築造工事を実施しています。

・目標の達成に向けた主な課題
 既存施設を運用しながら工事を実施するため、適切な工程調整等が必要です。

・目標の達成に向けた今後の方向性
 引き続き綿密な工程管理の実施と計画的な工事発注を行う等の取組により、事業を着実に進めていきます。

②導水施設の二重化、送水管の二重化・ネットワーク化
計画 災害や事故時だけでなく、更新等の工事の際にもバックアップ機能を十分に確保するため、停止することができない導水施設及び送水管を二重化

他系統からのバックアップ機能を確保するため、広域的な送水管ネットワークを構築するとともに、給水所への送水を二系統化

整備完了目標年度
第二朝霞東村山線    : 平成30年度
第二朝霞引入水路    : 令和4年度
第二朝霞上井草線    : 令和2年度
有明給水所関連送水管  : 令和元年度
多摩南北幹線      : 平成30年度
実績 以下を実施
・第二原水連絡管(第二朝霞東村山線)【完成】
・第二朝霞引入水路の整備に向けた調査及び設計
・第二朝霞上井草線の整備工事
・有明給水所関連送水管の整備工事
・多摩南北幹線の整備工事
評価

・対象年度の検証及び平成28年度~令和2年度の総括
  第二朝霞東村山線の整備は、想定外の大きな玉石の出現による度重なるシールド機械の掘進停止により、トンネル築造工事に遅れが生じたため、完成年度を令和2年度に変更しています。令和3年1月に工事が完了し、3月に運用を開始しました。
 第二朝霞上井草線の整備は、トンネル築造のための立坑工事において、軟弱地盤対策が必要となったことから、工事に遅れが生じました。これに加えて、朝霞浄水場内の既設管の移設等の追加工事もあり、完成年度を令和5年度に変更しています。平成29年度に立坑工事が完成し、令和2年度は、令和5年度完成に向けトンネル築造工事及びトンネル内配管工事を進めています。
 有明給水所関連送水管の整備は、トンネル築造のための立坑工事において、近接する共同溝の安全対策の協議や想定外のコンクリート支障物が出現したことなどにより工事に遅れが生じています。令和2年度は、立坑築造が完了し、トンネル築造工事を実施しました。
 第二朝霞引入水路は、工事着手に向け、整備用地に関わる調査や設計を実施しています。
 多摩南北幹線の整備は、起点となる美住ポンプ所築造工事の受注者破産による工事打切り等により遅れが生じたため、完成年度を令和4年度に変更しています。令和2年度には美住ポンプ所築造工事を再開し、引き続き令和4年度の完成に向けて立坑築造工事及びポンプ所築造工事を進めています。

 

・目標の達成に向けた主な課題
 第二朝霞上井草線の整備は、4つの工区で同時にトンネル築造工事及び配管工事を施工するため、綿密な工程調整が必要です。また、稼働中の浄水場や給水所内での施工については、施工方法等の詳細な検討が必要となります。
 第二朝霞引入水路の整備は、複数の施設を同時期に整備することから、適切な工程調整が必要です。
 多摩南北幹線の整備は、美住ポンプ所にて設備工事も含めた複数の工事を同時に施工するため、綿密な工程調整が必要です。
 
・目標の達成に向けた今後の方向性
 第二朝霞上井草線の整備は、各工区間の綿密な工程管理を行い、事業を着実に進めていきます。
 第二朝霞引入水路の整備は、計画的に設計を実施し、適切な時期に工事発注を行うことで事業を着実に進めていきます。
 有明給水所関連送水管の整備は、トンネル築造工事の工程管理を適切に行い、引き続きトンネル内配管工事を実施していきます。
   多摩南北幹線の整備は、立坑築造工事及びポンプ所築造工事の綿密な工程管理を実施することで、事業を着実に進めていきます。

③給水所の新設・拡充
計画 災害や事故時における断水等の影響が広範囲に及ばないよう、給水所を新設・拡充

整備完了目標年度
江北給水所   : 平成30年度
王子給水所   : 令和5年度
上北沢給水所  : 令和元年度
和田堀給水所  : 令和3年度
駒沢給水所   : 令和6年度
実績 以下を実施
・江北給水所の整備工事(完成)
・王子給水所の整備工事
・上北沢給水所の整備工事
・和田堀給水所の整備工事
評価

・対象年度の検証及び平成28年度~令和2年度の総括
 王子給水所の整備は、平成29年度に土砂搬出のための土質調査を実施したところ、一部の箇所で基準値を超える物質が検出されました。その安全対策等に万全を期す必要があることから、完成時期を令和7年度に変更しました。また、令和2年度に、配水池築造工事の実績を踏まえ、ポンプ棟工事の工程を再検討し、完成時期を令和14年度に変更しました。令和2年度は、令和元年度に引き続き、配水池築造工事を実施しています。
 上北沢給水所の整備は、他企業構造物への影響を回避するため、その対策の追加等により工事に遅れが生じました。このため、完成年度を令和5年度に変更しています。令和2年度は、令和元年度に引き続き、配水池築造工事を実施しました。
 和田堀給水所は、土留及び土工事が完成し、配水池及び配水ポンプ所並びに管廊の築造工事を実施しています。

 

・目標の達成に向けた主な課題
 王子給水所、上北沢給水所及び和田堀給水所の整備は、狭あいな敷地内で複数の工事が実施されることから、施工方法等について詳細な検討が必要です。

 

・目標の達成に向けた今後の方向性
 王子給水所、上北沢給水所及び和田堀給水所の整備は、配水池等の築造工事の綿密な工程管理や安全管理を行い、事業を着実に進めていきます。

(3)多摩地区水道の再構築

①施設の再構築
計画 老朽化の状況や事故時の影響等を勘案し、計画的に施設を更新・整備

地盤の高低差等を踏まえた効率的な水運用や維持管理を行うことができる配水区域へ再編し、施設を統廃合

整備完了目標年度
千ヶ瀬第二浄水所  : 平成30年度
千ヶ瀬第一浄水所  : 令和3年度
多摩北部給水所   : 令和2年度
幸町浄水所     : 平成30年度
柴崎浄水所     : 令和2年度
深大寺浄水所    : 令和4年度
奥多摩町の浄水所※ : 令和元年度

※奥多摩町の浄水所 … 大丹波、小河内、日原
実績 以下の工事等を実施
・千ヶ瀬第二浄水所の整備工事
・多摩北部給水所の整備工事
・幸町浄水所の整備工事
・柴崎浄水所の整備工事
・深大寺浄水所の整備工事
評価

・対象年度の検証
 千ヶ瀬第一浄水所の完成年度は、多摩水道運営プラン2017において令和5年度に変更しています。
 千ヶ瀬第二浄水所は、住宅が近接していることから、杭の打設方法を低騒音・低振動の工法に変更したこと等により、東京水道施設整備マスタープラン(令和3年3月)において令和6年度に変更しています。
 多摩北部給水所は、土中の想定外コンクリート塊の出現により時間を要したため、完成予定を令和3年度に変更しています。
 幸町浄水所は、土壌汚染対策等に時間を要しましたが、引き続き整備を進めており、令和3年度に完成予定です。  

 柴崎浄水所の完成年度は、工事搬出入車両に関する交通管理者等と協議の結果、出入口の見直しにより仮設工を追加する必要が生じたこと等により、東京水道施設整備マスタープラン(令和3年3月)において令和9年度に変更しています。
 深大寺浄水所の完成年度は、既設配水池を撤去する際、コンクリートの底板厚が完成図より厚く、想定より撤去に時間を要したこと等により、東京水道施設整備マスタープラン(令和3年3月)において令和10年度に変更しています。
大丹波浄水所及び小河内浄水所は、平成30年度に完成しています。

 

・目標の達成に向けた主な課題
 浄水所、給水所等の整備工事に当たっては、既存施設を停止して工事を行う場合、給水に影響を与えないよう事前に水配調整の実施が必要不可欠です。一方で、既存施設を運用しながら工事を行う場合は、工事より既存施設の運転管理等に影響が出ないよう、適切な工程調整が必要です。
 また、丁寧な住民説明などを行うとともに、近隣の住環境に十分配慮して工事を進めていく必要があります。

 

・目標の達成に向けた今後の方向性
 施設の再構築を着実に進めることで、多摩地区における給水安定性及び維持管理性の向上を図っていきます。

②送配水管のネットワーク化
計画 災害や更新工事等の際にもバックアップ機能を十分に確保するため、広域的な送水管ネットワークを構築

配水本管の新設及びネットワーク化など配水管網を整備

多摩南北幹線     : 平成30年度
境浄水場関連送水管  : 令和3年度
実績 以下を実施
・境浄水場関連送水管の整備工事
・多摩南北幹線の整備工事
評価

・対象年度の検証及び平成28年度~令和2年度の総括
 境浄水場関連送水管の整備は、境浄水場再構築に併せて実施します。
 多摩南北幹線の整備は、起点となる美住ポンプ所築造工事の受注者破産による工事打切り等により遅れが生じたため、完成年度を令和4年度に変更しています。令和2年度には美住ポンプ所築造工事を再開し、引き続き令和4年度の完成に向けて立坑築造工事及びポンプ所築造工事を進めています。

 

・目標の達成に向けた主な課題
 境浄水場関連送水管の整備は、複数の工区で同時に施工するため、綿密な工程調整が必要です。
 多摩南北幹線の整備は、美住ポンプ所にて設備工事を含めた複数の工事を同時に施工するため、綿密な工程調整が必要です。
 配水管網の整備は、多くの工事が競合するため、各工事間での工程調整や進捗管理が必要です。
 また、断水や交通規制に対するお客さまの十分な理解・協力を得ることも必要となります。

 

・目標の達成に向けた今後の方向性
 境浄水場関連送水管の整備は、綿密な工程管理や計画的な工事発注等を行い、事業を着実に進めていきます。
 多摩南北幹線や配水管網の整備を着実に進めることで、災害や事故時等における給水安定性の向上を図ります。

目標管理も併せてご覧ください。

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